部屋へ戻ると、ドアを閉めた途端背後から抱きすくめられる。顎を掴み強引に横を向かされ、激しく口付けられた。 無理な体勢以上に、その唇に翻弄されてしまう。苦しくて、酸素を求める咽喉の為に開かれた唇に、日向の舌が侵入する。絡め取り、強く弄られた。 「んんっ」 抵抗を伝えようと咽喉を鳴らしても、日向は容赦する様子がない。そのまま浴衣の襟下から手を差し入れるとまだしっとりとほてっている太腿に這わせた。もう片方の手でガッシリと腰を抱きかかえたまま、うなじに唇を這わせる。 「こ・・っんなトコで・・っ、がっつくなよ!!」 「るせーな、もう我慢出来ねえよ」 日向の熱っぽい声が、耳元に湿った吐息を落とし松山は身を竦ませる。強く抱き締めるほど腰に押し付けられる、硬くて熱い日向自身。浴衣の薄い布地越しにどくどくと血が集まっているのが感じられ、松山の鼓動も上がった。 下着には手を入れず、強く掴むように太腿を弄られ、中心をかすめるように手首が触れる度に松山は崩れ落ちそうになった。 「も・・・っダメ・・・!!」 松山が膝を折ろうとすると、日向は抱え上げそのまま室内へ連れ込んだ。 生活感のある調度品の無い旅館の室内は、どこか日常から掛け離れていた。手前の12畳ある本間に、露天風呂に向かう前には敷かれていなかった布団が敷かれている。枕もとの和紙の照明が、ぼんやりと部屋の角を照らし出していた。 日向は松山を抱えたまま掛け布団を蹴りよけ、ドッカリと松山を降ろした。 「イッ・・・」 背中を打ち付け、松山が小さく声を上げる。すぐに襟元をはだけられ、うなじにひんやりとしたシーツを感じた。糊の効いた洗い立ての布は触れると過剰な体温を奪い去り、熱くなった体を逆に意識させられた。 「はっ、ぁっ・・ぁっ・・」 ありえない場所で快楽を貪ってしまった後の所為か、松山はいつものように嬌声を抑えることが出来なかった。乱暴に掻き抱かれ、いたるところに強く口付けられる。 「・・んう!ひゅうっがぁっ!」 既に硬く立ち上がっていた胸元の小さな突起をキツク吸い上げられ、松山は思わず大きく仰け反った。ついさっきまでの誰かに見られるかもしれないという恐怖から解放された松山は、与えられる快感にすっかり流されている。 ちゅっちゅっとかわいらしい音を立てて日向のキスが降りていくのを、胸を大きく上下させながら小さく身を捩り受け入れる。突然大きく足を開かされ、浴衣の裾がはだけるとほてった体が冷たい室内の空気に晒された。 「・・・・・!!そ・こっ、もおいいからっ」 中心に舌を這わされ、松山が日向の前髪を思わず掴む。与えられる快感に苦しげにも見えるほど眉根を寄せた。 「オレがしてえんだ」 日向はぴちゃぴちゃとわざと淫猥な音を立てながら松山自身に舌を這わせているようであった。既に日向を押し退ける力も腕に残っていなかった松山は、立てられた膝を震わせはだけた浴衣を握り締める。 自身が次々にこぼす艶やかな体液と、絡められる日向の唾液が秘められた場所にも伝わり、松山は下肢を震わせた。そんな松山に気付いて日向はイタズラな笑みを浮かべ、予期せぬタイミングで中指を挿し入れる。 「イッ・・・!!ぁぁ!!」 手のひらで覆う間もなく嬌声を上げてしまう。熱い口腔に中心を含まれたまま差し入れた指を抜き差しされ、松山は汗で細い束になった前髪をシーツに打ち付けた。 「あっ!あっ!あっ!」 さっきまでキツク閉じられていた瞳が過度すぎる快感に大き開かれていた。抜き差しに合わせ涙がこぼれてしまう。 「あっ!・・・くっ、ダ・メ・・・だ!!」 跳ね上がってしまう腰を抑え切れない。日向との行為しか知らない未熟な松山の体は、煽られるまま乱れた体を日向の目前に晒してしまった。 飲み込みきれなかった唾液が頬を伝わるのを、日向が親指で拭ってやる。松山は呼吸を整えることも出来ず、呆然と体から意識を手放し掛けていた。 日向はそんな松山のすらりと長い片足を肩に担ぎ、両手で腰骨をガッシリと掴んだ。いつもは抵抗する松山も、まだ達した後の快感が抜けないのかされるがままに片足を投げ出す。 「んんっああ!!!!」 硬く熱い日向自身を埋め込まれ、松山は突然意識を引き戻された。 「ふぁっ・・!・・ああ!!ああ!!」 もう声を抑えることは出来ず、揺さ振られるまま嬌声を上げ続けてしまう。腰骨を掴む日向の腕を縋るように掴み、内部を掻き乱す日向自身をキツク締め付けた。 松山の嬌態に、うずめられた日向自身も中で体液をこぼし不埒な動きを助長する。 「あっやあっ、大きくなっ・てる・・!!」 抱え上げられた足の所為で日向が腰を深く引く度逞しい根元を見せ付けられ、視界からも犯された。 「あっ・・あっ・・、やあっ、もう熱い・・・・!」 潤んだ瞳からは次から次へと涙がこぼれ、日向の腕に爪を立てる。 日向は松山を抱きかかえると松山の腕を浴衣から抜き取り、見に纏うものをすべて取り去った松山を抱き締めた。 「アタマがオカシクなりそうだ・・オマエの中メチャメチャ狭い・・!!」 激しく、まるで壊そうとするかのように松山を突き上げる。 噛み付くように口付けると、一層強く奥を突き上げた。 「ああ・・ん!!ゴメ・・ン・・、イッちゃう・・・・!!」 乱暴なほど激しく蹂躙してくる日向に、松山は今夜何度目になるのかわからない絶頂を迎えた。熱く痙攣する後孔に、腰を打ち付け日向も熱い自身を解き放つ・・・・・ 「も・・・・動けな・・・・」 掠れてしまった咽喉で、呟くように松山がこぼす。 「明日はこんなにしねえから」 「あたりまえ・・だ・・・・!!」 松山が、残りの体力を振り絞って背中を向ける。 その白い背中に、日向はついばむようにキスを落とした。 「なんでだ・・わかんねえけどしてえんだ・・。オマエといると・・・・」 日向は布団の中で松山を抱き締め、耳元から首筋にいくつもキスを落とした。 「本当は、結構ストイックなんだぜ」 「・・・ばーか」 松山は、抱き締めてくる日向の腕を抱えこっそりと唇を寄せた。 本当は、背中で感じる日向の体温が心地よかった。いまになり部屋に戻って初めて波の音を意識した自分に気付き、熱くなった顔を日向に見られなくてよかったと思った。 松山だって・・・・日向が傍にいると他のことは何も考えられなくなる。だけど、日向のようにまだそれを言葉にして伝えることは出来ない。 ましてや行動で。 「ちょっと寒い・・・・」 照れ隠しに浴衣に手を伸ばそうとした松山を、日向がキツク抱き締めた。 「恋人がすぐ傍にいるのに、利用しないヤツはいないだろう」 「ちゃんと温めろよ」 松山は向き直って、日向の肩に顔をうずめた。 自分の顔が見えないように。 日向は松山が首まで赤くなっているのは指摘しないことにして、背中に腕を回し深々と抱き寄せた。 松山の髪に顔をうずめて、日向も部屋に戻ってから初めて、窓から轟が聞こえるほど自分達が波間に近くいることを思い出した。 END |